生きるリアルさの回復のために

読むことで自分の未来を拓く

失敗から学んで生き方を変える

私の最大の失敗は、あまり考えもせず地元に就職して定年まで働いたことだと思っている。大学を卒業する時点でというか、職業選択の時点で可能性を描いてみる努力をせず、グラフィック・デザインが手に職を付けることだと思って、その仕事ができる会社を身近なところで選んでしまった。手に職をつければ、独立を目指して会社で修行するという生き方も取れたはずなのにできなかった。それはグラフィック・デザインを本当に身に付けようとする意欲がなかったことになる。手に職をつける覚悟ができていなかったことが経済的自立の最大の失敗原因だと思える。要は覚悟の問題である。

サラリーマン時代に、それでも覚悟を持って自分の道を切り開こうともがいていた時期もあったことに気づく。その時はグラフィック・デザインをより専門的にやりたいと考えて、印刷会社からデザイン事務所への転職を考えていた。ところが自分にそれほどデザインの才能が無いことに気付かされた。順番を間違えていた。最初にデザイン事務所へ就職し、技術をプロとして磨いていく訓練の場として数年働いたのちに、印刷会社に就職する方が身につけた技術を活かせるはずではなかっただろうか。

そうやって考えてみると、自分にはデザインを真剣に取り組もうとする意欲も、技を磨こうとする基礎的な才能もなかった事実を認めなければならない。そもそもデザインは食うための道具としてしか考えていなかった。本当は文学をやりたかったのだ。文学では飯を食えないからデザインならと甘い考えに気を許してしまったことが、今思えば自分の人生の失敗なのだ。いつまでも本気で何がしたいかを突き詰めなかったことの結果として、生き方に気迫がない現在があるのだ。

さてありのままの事実が失敗だったとして、その失敗をどのように活かしていけばいいかを今、考えなければならない。今は働かなくても食っていける環境にある。ある意味、それは過去の失敗したサラリーマン時代の稼ぎで訪れている環境でもある。