生きるリアルさの回復のために

読むことで自分の未来を拓く

自分の郷土が舞台の時代小説

たかが趣味の読書会サークル活動に、自分を向上させようとするまで打ち込まなくていいものよと思うのだが、趣味なだけにかえって拘ってしまうのかもしれない。自分の生き方が関わってくると考えるといい加減に出来ないのだ。文学散歩といった楽しみを小説を深く読むように、イベントとして企画してしまう。言わば時代小説の舞台を再現するための探究的な、文学散歩なのだ。加賀の一向宗が中心となった農民一揆の歴史的事実が我が郷土の中にかつてあった。空間的には確かに私たちの祖先の土地に一大事件として巻き起こったのだ。そのリアルさは21世紀の現実にはない。ところが直木賞作家が小説の中でリアルに再現してくれる。登場人物を想像力で作り出す。手取り川や白山、打木や小松や山中、高尾城や鳥越城や吉崎御坊など実名で小説の中に出てくると、現在も存在する場所なので想像する基点が特定されるわけだ。そこに実在した人物と想像された人物が入り混じって躍動する。ひょっとすると私の祖先が混じっているかもしれないと想像もできる。自分もその時代に生きていたらと想像もできる。言わば自分の想像力の解像度が中世と現代の往復の中で試される。しかしそれは上手くいけば頭脳の快楽になると思う。自分の郷土が舞台の時代小説を読む醍醐味というものだろう。