身の危険に遭わされた時期があったことに今では信じられない思いがする。
何もいいことがなかったと嘆くことすら贅沢なことだった。
あれは理不尽だと言えるような日常が学生時代の圧倒的逆境に落とされることで一瞬にして奪われた。
日常の割れ目に突如静かに現れる戦闘が極度の緊張をもたらせた。
その時の肉体的反応がぼくの記憶に残っていた。
その戦闘状態から解放されたと感じられるように時代が変わった。
何よりも当たり前に生きていられることが最上の喜びだった。
とうとう身の危険が遠ざかる。
その余韻は死とは反対に振れて喜悦に変化する。
ある意味貴重な体験をしたともいえる。
むしろ今では大切な恩寵と感謝すべきかもしれない。
現代の戦闘員が死と直面した経験を内面的に想像できる経験をシンボリックではあるけれど、ぼくもしたのだった。