生きるリアルさの回復のために

読むことで自分の未来を拓く

公民館読書会との出会い

共働きだったぼくたちは同じ年に会社を退職する約束だった。妻が3歳下なのでぼくは定年後2年間は延長して同じ会社で勤めることにしていた。ところが2年目に配属になった部署はあまりにも過酷な環境に思えて妻との約束を破ることになった。当然猛反対を受けたがそれを押し切ってもぼくは退職したかった。妻が60歳になる歳まで(ぼくが62歳から63歳になるまで)の1年間は昼間は自分だけがフリーの状態になって、それまでの会社勤めの環境から激変することになった。今から思えば思い切って一人で出来ることに挑戦すればよかったのかもしれないが、環境の変化に体がついていかず左手が肩から上に上がらなくなったり、左上半身が帯状疱疹になったりした。またその時だけ脊椎管狭窄症にかかった。それは3ヶ月ほどで自然に治ったからストレスが原因だったのかもしれない。精神的に安定しなかったのだ。その1年をもがいて何とか立て直そうとしていた時に、公民館の読書サークルに出会った。

当然といえば当然なのだが読書サークルには、ぼくよりお年寄りの方々ばかりでそれも男性は二人だけで圧倒的に女性が多かった。最初の見学の日、その読書会はあまりにも雑談が勝手に進行するので、大変失礼ながら幼稚園児が騒がしくしゃべっているような印象を持ってしまった。先生役の人がピーっと笛を吹いて静止しなければどこまでも続くようだった。だから最初の印象は相当ひどいものだった。でもぼくは目上の人を大事にする古い教えを受けていたので優しく見守ることにした。その第一印象は数年するうちに徐々に改善していった。ぼくも中に入って少しだけ論理を通すことにしたら勝手なおしゃべりは勢いを弱めだしていった。課題本も読みやすく、分かりやすい日本の短編小説が殆どなところに、ガルシア・マルケスカフカシェークスピアを持ち込んだりした。それでも何とか受け入れて貰えた。ここが凄いところでぼくも続けることができた要因になる。