生きるリアルさの回復のために

読むことで自分の未来を拓く

私と読書の関係

定年後地域にどう関わるかは、定年退職者の共通のテーマになると思う。ある人は町内会の役を自ら引き受ける。町会長ともなれば中々忙しく、また上手く地域に溶け込める方法になる。私の場合は地域の公民館サークルに読書会があり、内容が意外にそこそこのレベルにあり参加することにした。珍しく純文学系の小説も読まれていた。中にドストエフスキーを読んでいたメンバーもいたのは嬉しかった。3年ほど欠かさずに参加していると会長になってくれと頼まれ断りきれなかった。会長となると地元の市役所との付き合いが生まれる。生涯学習課や地域振興課と接触することになる。生涯学習課の管轄で、図書館協議会の委員になって意見を求められるようになる。読書推進協議会という団体から、県内の地域読書会活動の推進に係るようになる。ピーク時には県内で数千人の読書会メンバーがいたことがあって、会の役員となると機関紙の発行や文学講演会、文学散歩、合同読書会などの主催を担うことになる。流石に現在の会員数は激減して数百人程度らしい。私は幸運にも自分の定年後の居場所を確保できたのだった。

読書という比較的熱心に取り組める領域を持っていたおかげで、さしたる苦労もなく現在のポジションに治まっているが、振り返ってみると二人の女性の後押しがあったことを思う。野々市市の読書会連絡協議会の前会長のOさんと、石川県の読書会連絡協議会の現会長のMさんである。

ところでぼくは図書館で本を読むという習慣ができなかった。退職後すぐの頃は良く図書館に出かけていて、自分の席を見つけて読んでいたが、周りの雰囲気に馴染めなかった。ぼくと同年輩の高齢者の本を読む姿に元気がなかった。新聞を読む高齢者は新聞ばかりを読んでいた。張り詰めた緊張感がなく、だるく淀んでいた。むしろそういう環境から身を守るように自宅の自室に閉じこもった方が読めた。自室に閉じこもる方が、学生時代の熱い文学熱を思い起こさせた。そして現在では図書館で本をじっくり、貪るように読むという大人はほとんどいない、と言ってもいいのではないか。中高生の勉強する環境にはなっているが、大人はもう勉強しなくなっている。

先日図書館協議会の活動で、福井県越前市の中央図書館を視察することがあって野々市市図書館前から公用車2台に分乗して出かけた。越前市には、なんと読書のまち宣言というのがある。

https://www.city.echizen.lg.jp/office/090/060/dokumachisengen_d/fil/dokusyomatisengen.pdf

あさどく、うちどく、まちどく、いきがいどく

というのが面白い。